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年金制度・繰り下げ請求は政府に都合がいいだけでほとんどの国民にメリットはない [年金制度]

年金制度は法改正が行われ来年4月から「75歳まで繰り下げ」ができるようになる。これによりこれまで70歳まで繰り下げた受給額の増額率が42%から75歳繰り下げで84%になるという。


そもそも年金制度のうち、老齢基礎年金や老齢厚生年金は「歳をとって働けなくなった」ことを支給事由として支給されるものである。そして、自営業者等を対象とする国民年金は40年間保険料を納入して満額支給される仕組みになっている。昭和60年の大改正では、国民年金の年金額は一人60万円で月5万円、夫婦合わせて10万円とされた。現在は物価スライド等で月6万5千円程度になっている。もちろん、この金額で老後を暮らせるかといえば人それぞれである。そこで、厚生年金と同じように2階建てにしようと国民年金基金に任意加入できるようになった。しかし、その制度の利用は芳しくない。


昭和60年の大改正の時は未納保険者も多く、25年は納付したが40年は納めていないという人の少ない年金額を増額する方法として60歳から65歳までの任意加入と繰り下げ支給を認めることで、年金額が少ない人を救済する措置を取ったはずだ。


厚生年金保険では保険料の半額を事業所が負担し、もう半分が個人から源泉徴収する保険料となっている。個人の基本給与が上がれば保険料も上がる仕組みだから、事業所の負担はかなりのものだった。そこに労働法の改正で派遣社員を置くことができるようになったことで、正規社員の保険料負担で済むようになった。さらに同一労働同一賃金を建前に正規社員の賃上げを停止する手法を取った。一方の派遣労働者の賃金は派遣会社で決定するから低賃金となる。


つまり、これまで厚生年金保険を維持してきた財政を労働法改正によって大きく目減りさせた。

厚生年金保険の年金額は当初、全国のサラリーマンの年間給与収入の6割を給付できる水準で設計されていた。その設計を壊したのは派遣労働法である。したがって、厚生年金保険の給付財源も著しく減った。そして、長いデフレによる経済の影響で賃金は微増どころか減少に転じたはずだ。そこへ団塊の世代の年金受給が始まったから給付財源は一層減るという悪循環に陥っている。


政府は年金支給財源を増やすことができず、働けなくなった老齢者を働かせようと60歳定年法から65歳までの雇用確保措置の段階的義務化などを企業へ求め給付財源の確保を試みた。それでも財源が乏しいから、年金ではペナルティ同様の「繰り下げ支給」を宣伝し、「損得勘定」で生きている人をターゲットにして年金支給の先送り作戦をしているように思えてならない。


「受給する年金で生活できないなら働け。65歳はまだまだ働ける年齢である。」という言い方を政府はするが、介護保険料は65歳から急激に納付額が増額となる。そして、支給する年金から天引きしている。日常生活において介護や支援が必要と認められる人が多い年齢だから65歳で区切って保険料の額を決めたのではなかったのか。


年金制度と介護保険制度考え方に大きなずれがあるのではないのかと思われる。



これまでの年金制度で繰り下げについて説明すれば、65歳になったとき70歳まで繰り下げ支給を申し込み70歳前に死亡した場合は、遺族(妻)は65歳から受けるはずだった本来年金額を未支給年金として一括受給できるはずだ。この時は繰り下げ加算はつかない。


ここからは推論なのでご注意。

もし、65歳時に75歳までの繰り下げ請求をしたとする。70歳までに死亡したときは先の例と同じく65歳時の本来年金が未支給年金となるが、73歳で死亡した場合はどうなるのか。当然、65歳時の本来年金額の未支給年金が支給されそうである。しかし、支分権の時効は5年なので、73歳から69歳までの期間の5年間について65歳時の未支給年金しか受け取れないのではないかと考えるのである。つまり、65歳から68歳までの期間は時効消滅となり支給されないのではないかと怪しんだ。とはいうものの繰り下げ期間について時効中断の条項を入れれば、65歳支給の本来年金額による未支給年金は支給されように法律は作られるのだろう。


年金額の損益分岐点はほぼ11年であり、65歳本来受給者が多ければ76歳以後の給付は年金財源からの持ち出しになる。平均余命が延びている以上76歳からの持ち出し額を減らすには、損益分岐点の延長が必要となる。75歳までくり下げ請求をさせた場合、65歳の基本年金額が200万円だと仮定し、10年で2000万円となる。75歳到達で1.84倍の年金額になるから、年金額は368万円 65歳から本来受け取る額は2000万円だから2000÷368=5.43年。80.43歳で65歳から75歳の受け取り分を受給し終えたことになる。ちなみに平均余命は2019年男子で81.41歳だから、まだ損益分岐点の手前となる。年金額の損益分岐点は11年と先に書いた。単純に11年×200万=2200万 2200万÷368万=5.97年 先ほどの80.43+5.97年=86.4歳が損益分岐点である。平均余命を5歳も上回っている。


話が広範にわたったが、2022年4月から実施される75歳までの繰り下げ請求にかかる年金法の改正施行は政府には財政支出を抑えるメリットとなるが、国民には何らメリットはないのではなかろうか。年金を生活の糧にする必要のない高額所得者だけが繰り下げ請求をすればいいのではないだろうか。


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