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財務省「年金支給68歳案」 [年金制度]

財務省が厚生年金保険の支給開始年齢を引き上げるべきだとする主張を展開したようだ。

現在は65歳へ段階的に支給開始年齢を上げている。


まず、結論から言っておく。

支給開始年齢を68歳に引き上げるという案は年金制度の根幹を揺るがすもので、憲法違反になる。


昭和60年改正前の厚生年金保険の支給開始年齢は60歳であった。そして、国民年金の支給開始は65歳。共済年金は55歳。

このバラバラな年金支給開始年齢の制度を統一したのが昭和60年の法律改正である。


この法律改正で年金支給開始年齢は国民年金の65歳に統一するという大義があった。それと同時に、それまで任意加入だったサラリーマンの妻を国民年金第3号被保険者という位置づけにし、全国民一人一人が年金を受給することができるようにした。


この法律改正に当たって、従来の国民年金加入期間が20歳から60歳までの40年加入を原則とするものだったので、国民年金相当分を基礎年金という名称に改めて厚生年金保険、共済年金の定額部分に組み込まれた。


そして、法律改正の時20歳の者の厚生年金保険の受給開始が65歳となるようにした。そして、受給資格20年以上で60歳から支給かいしだったものを生年月日に応じて段階的に65歳に近づけるように経過措置政令で調整してあるのだ。本来は年金加入中の者の支給開始年齢をいじるのは契約違反である。法律改正時20歳の者が65歳から支給で法律改正時21歳の者は60歳支給でよかったはずだ。


もし、昭和60年法改正の経過措置政令が妥当となるとするならば、同時に経過措置政令により段階的に年金の支給開始年齢を引き上げられた年代の雇用に関する法整備がなされていなければならなかった。しかし、政府はそこまでしなかった。65歳までの雇用延長など最近の話である。


68歳受給開始の案だけでは何とも言えないが、もし、昭和60年法改正と同じような経過措置まで説明しているならば反対は起きないだろう。しかし、支給開始を68歳にする大義名分が何もない。経過措置の案まで提示しなければ契約の一方的な変更になる。そして、68歳までの雇用を保証する法案さえも提示していない。

財務省のご都合主義としか言いようがない。


これには布石がある。昭和60年国民年金法の改正は完全物価スライド制であった。ところが、人口構成の関係で年金の被保険者が少なくなっていること、平均寿命が延びたことから、2004年に「マクロ経済スライド」が導入されてしまった。これは、すでに年金額が確定されたすべての年金受給者の支払いに関する契約の一方的変更であって憲法違反ではないかと今でも怪しんでいる。


そして、今回、再び同じ思考で契約の一方的変更を行なおうとして案が提出されたのである。


GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がコロナショックによる不況で溶かしてしまったのは15兆円とも17兆円とも言われる年金財源を年金の受給開始年齢引き上げで解決しようとしているのではないかと怪しまれても仕方あるまい。


国が国民との契約において保険料を徴収したのだから、契約の中において支払いを行うのは当然であって、財政がひっ迫しているというのであれば、他の予算を削ってでも契約を履行するのは国家の責任であり、政府の責任ではないのか。


国民が長寿になったとか少子化で被保険者が少ないとかの理由はすでに数十年も以前から分かっていたことであり、今更契約変更の理由にはならない。むしろ、GPIFという独立行政法人が国民から徴収した保険料を株式や投資で溶かしてしまった穴埋めを国民に強いているように思えてならない。


加入期間40年という長い契約期間の中で国が一方的に契約を唐突に変更するのは憲法違反ではないのだろうか。




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