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年金を繰り下げ請求して年金額は増えるが [年金制度]

人生100年時代だから年金を繰り下げ請求して年金額を増やそうという報道記事が目に付く。




前者は1年前の記事で後者は1年後の記事でつい最近のものである。両記事とも嘘は書いていないが、大きく抜けていることがある。記事は法律上の一般的な内容で個々のケースには触れていない。


実は厚生年金保険では加入期間が20年以上ある被保険者に65歳未満の配偶者があると配偶者が65歳になるまでの間加給年金(年額390500円)が加算支給される。ところが繰り下げ受給をするとこの間の加給年金は支給されなくなることがある。


事例として厚生年金保険20年以上加入の夫65歳、妻60年金を65歳から受給すると夫の老齢厚生年金+加給年金+老齢基礎年金となる。夫が67歳から受給すると老齢厚生年金+加給年金(妻が65歳になるまで)+繰り下げ分の加算額+老齢基礎年金となる。また、夫が70歳から受給すると老齢厚生年金(当初額)+繰り下げ分の加算額+老齢基礎年金となる。この事例では70歳の繰り下げ受給を選択すると加給年金額は受給できない。


加給年金は年額390,500円だから65歳から年金受給すると70歳までに1,952,500円約200万円を受給できる。


年金の損益分岐点は約11年であり、65歳から受給すれば76歳まではこれまで支払った自分の年金原資が給付されるようなものである。それ故、75歳繰り下げ受給を選択すれば86歳が損益分岐点になると考えたほうが良い。(実際には損益分岐点の年齢はもっと下がる。)


この加給年金は夫と妻の年齢差が5歳程度を想定しているから、夫と妻の年齢差がそれ以上の場合は話が違ってくる。20歳年下の妻がいたとすれば65歳から加給年金が85歳までの20年間受給でき、その額は781万円にも上る。


加給年金は配偶者加給年金と思われがちだが、18歳未満の子がいる場合も加給年金(224,700円3人目以降74,900円)が子が18歳到達年度の末日まで支給される。妻が老齢厚生年金20年以上の加入期間があれば夫分の加給年金が加算されることもある。


最近は共働き世帯があるから夫婦ともに20年以上の厚生年金加入期間がある事例が多いが、この場合夫婦ともに加給年金の受給資格が発生する。しかし、配偶者の年金の受給権が発生していない場合や年金受給権は発生しているが配偶者が雇用保険の失業給付の受給により年金が全額支給停止となっているような場合は加給年金を受給することができる(年金の受給は月割り計算)。


最後に冒頭記事のように個人の年金額が結果的には増えるのは事実ではあるが、税金面では年金額が上がれば公的年金控除額は少なくなり税金が増となる。また、介護保険料の額も上がってしまうという事も頭に置いておかなければならない。そして、加給年金というあまり表に出てこない金額にも注意して総合的な生活設計が必要だろう。



いずれ片手落ちな記事を鵜呑みにして安易に年金の繰り下げ受給をしてはならないのではなかろうか。


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